法学部教授 黒田基樹
4月17日(日)に放送された第15回では、時代考証上の工夫がいくつかみられていました。
一つは、前回でも出てきたことですが、秀吉家臣同士の飲み会です。前回は加藤清正が石田三成屋敷で飲み会、今回は大谷吉継が三成屋敷で飲み会していました。実はこれ、制作側から家臣同士の自由な飲み会をできないか、と尋ねられたので、それならこの当時、誰かの屋敷に集まって飲み会が行われていたと答えたところ、このようなかたちで採り入れられたものになります。
実際、この頃から城下の屋敷で、知り合いが集まっての飲み会が、朝・昼・晩と行われるようになっていきます。とくに江戸時代では、江戸に出府した大名は、出府したその日から、知り合いの大名達との飲み会を繰り返していきます。平和な時代、大名の何よりの仕事は、友達の維持と拡大におかれていて、そのための手段が飲み会だったのです。
もう一つは、いわゆる「太閤検地」の話。ここでは秀吉の検地政策での画期的な内容としては、計量枡の統一のみを取り上げています。太閤検地については、教科書的にはいろいろな側面で画期的なものとして取り上げられていますが、私はそのようには考えていなくて、唯一画期的といえるのは、全国の計量単位(枡や棹[さお])を統一したことだけとみています。
秀吉が様々な全国政策を行ったことは事実ですが、近年の研究によって、どの部分がそれまでと異なって新しいのか、冷静に理解されるようになってきました。今回のドラマでは、これに限らず近年の戦国史研究の成果をかなり反映させた内容になっています。そのことについてはその都度、お伝えしていきたいと思います。
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